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COBI COFFEE Special Interview

おうちでコーヒーを楽しむために(2)

―基本のレシピの通りに淹れてみて、例えば味が薄かったとか、香りが足りないとか、逆に味が濃く感じたとかがあれば、それぞれの要素を調整していくということは分かりました。では、どうやって調整していけば好みに近づくのか、教えてください。

「雑誌などでレシピを教えてくださいと言われれば教えることはもちろんあるのですが、やはり豆の状態や挽き具合や様々な条件が分からないのに決めうちのレシピをお伝えするというのは難しいところもあって、味を自分で調整する、コーヒーの味をデザインする楽しさを知ってもらえたらなと思って大枠のレシピをお伝えしました。例えばまずは豆の量ですが、これはコーヒーの濃度に直結するので、味が薄ければ量を多くしてみたり、濃く感じたならば減らしてみたりで調整できるかと思います」。

―先程、不確定要素だとおっしゃっていた豆の挽き目についてはどうでしょう。

「軽く触れましたが、細かい挽き目であれば抽出効率は高くなり、コーヒー豆の成分を引き出しやすくなります。挽き目が粗ければ反対に、コーヒー豆の成分は出づらくなります。ただ、この挽き目による抽出効率も、湯温や豆の使用量との掛け算で決まっていくので、ペーパーフィルターならこれだとは明確に答えられないんです。一番間違いがないのは、豆を買うお店に、その豆を使用するレシピを聞いて、その通りに挽いてもらうこと。ただ、早く飲み切らないと豆は酸化していってしまうので、長く楽しもうと思っている場合には家で挽く方が鮮度的には望ましいです。家で挽くなら、ペーパーフィルターなら中挽きにして淹れてみて、より甘味や苦味、コクともいわれる質感を出したければ細かめに、綺麗な酸や滑らかな口当たり、後味を出したければ粗く調整してみると良いと思います」。

―お湯の温度は先程90℃と決められていましたが、ここは変化させるべきですか。

「水出しコーヒーというものがあるように、コーヒーは、低い温度でも美味しく淹れることが出来ます。その代わり、温度を低く淹れるとそれだけ抽出時間は長く必要になります。例えば90℃で淹れるより80℃の方が時間がかかります。ただ、味わいを自分で調整するにはある程度条件は決めておいて、変化させる条件を少なくしておく方が分かりやすいと思うので、温度は決めておいてもいいかなと思います。そういう理由で90℃とお伝えしました」。

―ご自宅で飲まれる方で、パートナーの分も一緒に淹れたいという方は多いと思うのですが、2杯分になった場合は豆の量や抽出時間はどうなりますか。

「豆量は、ブリューレシオに則って考えると、先程1杯が200ccで13gだったので400ccになると倍量の26gが必要になります。では抽出時間も単純に倍になるかというとそうではないというのが難しいところです。成分を引き出す豆の量が増えるので必然的に抽出に必要な時間は増えるのですが、それも挽き目や様々な条件に絡んで変化していきます。ただ一つ言えることは、短いとしっかり豆の持つ成分を抽出しきらないままお湯だけが落ちてきているということが起こりやすくなります。僕自身も早く淹れすぎてしまって失敗することがあるんですよね。なので、短いよりは長い方が美味しく淹れられる条件である場合が多いです。
ちなみにクレバーというコーヒー器具を使う場合、これはドリップと違い浸漬式と言ってお湯に浸すことで抽出していく方法なので抽出効率が下がり時間がかかります。400cc使用するなら豆は30gで、抽出時間は4分。ドリップする楽しさは感じにくいかもしれませんが、浸漬式の方が失敗することは少ないように思います」。

コーヒー器具について – 味をデザインするという選択

―クレバーのお話が上がりましたが、皆さん使用するコーヒー器具も悩まれることが多いのかなと思うのですが。

「どんな器具を使用していても、美味しいコーヒーは必ず淹れられます。コーヒーに対するアプローチ方法が異なるだけです。先程のクレバーや、あとはフレンチプレスなどの浸漬式の抽出方法は、ドリップなどと違って抽出過程に人の手が加わることがないので、コーヒー豆の味をそのままダイレクトに味わうことが出来ます。手を加えないからこそ、決められたレシピに沿っていれば大きく味を外すことも少なくなります。一方ドリップなどの透過式の抽出方法は、お湯を注ぐという方法で人の手が加わりますよね。その為、レシピ通りだとしても淹れる人の些細な注ぎ方やお湯の当て方の違いで味は全く変わっていきます。ただ反対に同じ豆に対して表現できる味わいの幅は広がっていきます。味をデザイン出来るというのがドリップの楽しさかなと思います」。

―どちらにもそれぞれの魅力があるということですよね。COBI COFFEEではネルドリップを採用していますが、それにももちろん理由はあるのですよね。

「豆の味をそのまま味わいたいなら浸漬式。だけどコーヒー屋をやるならその店の表現というものは必要だと思っていて、だからドリップという方法を選択しているのですが、その中でもネルドリップを採用しているのは、先程も言ったコーヒーの味の表現幅がとにかく広いからです。ペーパーフィルターを使用する場合、器具によってその形状は決まっていますよね。だからそれに従って、器具ごとにお湯の通っていく速度や通り道がある程度決まっているということで、表現出来る幅はそのドリッパーの決めた範囲内になります。ネルドリップの形状は全く定まっていません。その分、早くお湯を落とせば早く流れていったり、ゆっくりゆっくり注げばその落ち着いた速度でお湯は落ちていったり、全く制限がないんです。また、目がペーパーフィルターよりも荒いので、その分ペーパーだと吸ってしまうコーヒーの油分まで落とすことが出来るのもネルドリップの特徴ですね。その表現幅の広さを利用して、お店の表現したい味を可能な限りデザインしていきたいという思いがあります」。

―ネルドリップは昔ながらの喫茶店のイメージがありますよね。

「スペシャルティコーヒーじゃないコーヒーの持つネガティブな要素を打ち消して、美味しさを最大限に引き出しながらお店の味を表現する為に、ネルドリップを採用していた人は多かったんだと思います。そういう時代背景があるからだと思うんですが、一般的に売られているネルはそのどれもが深煎りの豆のためのネルです。ただ、COBI COFFEEの豆はスペシャルティコーヒーなので深煎りも浅煎りもあります。その為、浅煎りにも対応出来るようにネルから特注で作りました。通常綿100%ですがそこにポリエステルを10%混ぜていたり、ネルの目の荒さや深さももちろん変えました。ちなみにネルを使用したドリップでは、200ccのお湯に対して豆は16gと少し多めに使用します」。

―最後に、ご自宅でコーヒーを淹れる楽しさってどんなところにあると思いますか。

「店で飲むコーヒーと家で飲むコーヒーはやっぱり別物で、お店の表現したいコーヒーの味を楽しむならやはりお店で飲む方がいいのかなと。ただ、家で飲むコーヒーは、何度か淹れてみて、味わって、自分の思い通りの味を表現出来た時の楽しさがあるし、何より”ドリップをしてコーヒーを淹れる”という行為そのものに楽しさや幸せな時間があったりするのかなと思います。だからこそ、淹れ方やレシピに囚われすぎずに、自分の好みの美味しさを目指して、コーヒーの味をデザインしていただきたいなと思います」。

COBI COFFEEの豆を卸先に向けてご紹介しているKITCHEN BROTHERSさんのサイトにて、COBI COFFEEのお店をご紹介いただいております。
こちらも是非ご覧になってください。

いいお店ってなんですか?—COBI COFFEE 川尻大輔

PHOTO : Ryuhei Koumura(@ryuhei.koumura
TEXT : Yukina Moriya

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