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COBI COFFEE Special Interview

アイスコーヒーの淹れ方

だんだんと夏に近づいてくる中で、アイスコーヒーの淹れ方を教わりたいというお声を多くいただきました。そんな今回は、引き続きCOBI COFFEEマネージャーの川尻さんにアイスコーヒーについて教えていただこうと思います。

アイスコーヒーの美味しさとは

―アイスコーヒーの美味しさってどこにあるのでしょう?自分でアイスコーヒーを何度か淹れてみて感じたことなのですが、出来上がったコーヒーが美味しいのか失敗なのか、正解がどこにあるのか、全く分からず困っていました。

「それは何故かというと、ホットコーヒーは味の基準が明確化されているものだからなんです。コーヒーの香りを表す言葉にアロマという言葉を用いますが、これは湯気が立った時に感じやすいものです。アイスコーヒーのように温度が冷たく湯気が立たないものは、このアロマが感じづらいためにまず香りでの判断が難しくなります。また、ホットコーヒーは温度が高いところから低いところに落ちてくるものなので3つくらいの温度帯に分けて味を判断しているのですが、アイスコーヒーにはその温度変化が存在しないので温度分布によって味を見極めることもない。だから味の基準を作り、ジャッジすることが難しくなるのです。逆に言うと、基準が明確にない分、淹れる人や店の世界観がとても出やすいということになります」。

―では川尻さんの考える美味しいアイスコーヒーとは?

「僕自身が考える美味しいアイスコーヒーとは、質感の綺麗な液体であること、または飲み心地のいいものであることでしょうか。アイスコーヒーとホットコーヒーの違いは先ほど伝えた以外にもちろんあって、アイスコーヒーはその質感も感じづらいものです。ということは、アイスコーヒーはその液体の綺麗さでしか美味しさを判断できないんじゃないかと思います。飲み心地が良くて、綺麗で、一杯をするするっと飲めてしまうような、そんなアイスコーヒーが理想です」。

―喉が乾いてごくごくと飲みたい時にお店で頼んだアイスコーヒーが、飲み心地が重たくてなかなか飲みきれないという経験をしたことがあります。同じように、家で淹れたアイスコーヒーもなんだか飲みづらいものになったりしてしまいました。

「いわゆる苦いアイスコーヒーを作る方法はインターネットで検索するとたくさん出てくると思います。ただ、そのレシピだとしっかり細かく豆を挽いて成分をたくさん引き出してボディ感が出るようにしているもののはずです。そのレシピをそのまま浅煎りのコーヒーやスペシャルティコーヒーに応用するとすごく飲みづらい液体が出来上がってしまうと思います。浅煎りで酸味があるコーヒーなのにボディもあって苦さもある、要するにバランスが悪いものになってしまう可能性が高いです。ということで早速、実際にアイスコーヒーを淹れてみましょうか」。

基本のレシピ(1杯分 / ペーパードリップの場合)
出来高:200cc
約60〜70%(130cc前後)のお湯でコーヒーを抽出。30〜40%(70g前後)の氷で薄めます

使用するコーヒー豆:13g前後
挽き目:中挽き程度
お湯の温度:90℃

1.氷を入れたサーバーに、前回の基本のレシピに沿ってコーヒーを抽出します。
2.130ccのお湯でコーヒーを抽出するので、2分より少し早めに注ぎ切るのが自然です。

―いくつか質問があります。まず、アイスコーヒーのレシピでは豆の量をホットで使用する倍の量を使用してくださいと書いてあるものを見かけたことがあるのですが、豆の量は前回とほぼ一緒で大丈夫なのですね。

「前回お伝えしたブリューレシオ(豆の量:使用する水量の比率)は守った比率で考える方が失敗が少ないと思います。使用する豆の量を変えないのであれば、その分抽出する量を減らすことで濃く抽出し、それを氷で薄めるという考え方です」。

―抽出量を減らしても薄いコーヒーになってしまうことはないですか?

「コーヒーを淹れる時、最初に注ぐお湯で抽出される液体の方に、コーヒーの成分は濃く出てきます。そして注ぐお湯の最後の方に溶け出す成分は少ないはずです。その後半の液体を氷に置き換えても、コーヒーの成分濃度は大きくは変わらないという理屈です」。

―お湯の温度や挽き目もホットの時同様なのですね。

「湯温も挽き目も、抽出効率を上げるか下げるかに関わるものに過ぎないので、まずは変えずに淹れてみてください。過抽出気味だったり味が薄いと感じたらコーヒー豆のグラム数を増やしたり挽き目を変えて調整してみたら良いかと思います」。

アイスコーヒーの概念

―COBI COFFEEにはアイスコーヒー用としておすすめしている豆はないのですか。

「そうですね、アイスコーヒー用の豆は用意していません。そもそもアイスコーヒーというものは重たくて苦いものという認識があって、その昔ながらの喫茶店にあるようなアイスコーヒーは一杯をすっきり飲むというより、ミルクとガムシロップを入れて飲む前提の重さに焙煎されています。その味を目指したアイスコーヒー用の豆を焙煎するとなると、深く焙煎することになるのでどうしてもコーヒーの持つ酸味など他の特徴が消されて苦味だけが際立ちます。スペシャルティコーヒーの世界では産地や区画によって異なる個性を楽しむことが一つの大義なので、そういった理由から自分たちはアイスコーヒー用に豆を焙煎せず、豆の味をうまく引き出し表現することをアイスコーヒーでも同様にしたいと思っています」。

―でも先ほど、アイスコーヒーは美味しさを感じづらい、という話がありましたよね。豆の個性は出しづらいんじゃないですか?

「味を出しにくいコーヒーの個性をどうやって引き出すかというと、やはり豆の量を増やして、コーヒーの持つ良い成分を多く引き出そうとするしかないです。だから、アイスコーヒーのレシピで、豆の量をホットの2倍とするところがあるのは理にかなっていると思います。一方、どうしても豆の量を増やすとコストがかかるので、その対応策として細かく挽いて抽出効率を上げる方法をとられることも多いです。ただ、細かすぎると成分が出やすくはなりますが、併せてボディ感や渋みも強く出やすくなるので、豆の個性は出せても飲料としての魅力に欠けるように感じます」。

応用編(カフェオレと水出しコーヒー)

「ということで、コーヒーの味のキャラクターは、濃度に直結するコーヒーの粉の量を増やして濃度調節をすればしっかり表現できるはずです。基本的にはCOBI COFFEEのどの豆も変わらず淹れて大丈夫です。ただ、浅煎りの方が豆の持つ水分値が多いので味が出にくく、対して深煎りは水分値が低いので、豆の種類というよりは豆の焙煎度合いで味の出方は変わってきます。同じ水の量で淹れた場合は水分値の多い浅煎りの方がどうしても少し味が出にくかったりするのでその辺りは少しの調整は必要かもしれません。」

―この方法だったら、氷を牛乳に変えてアイスカフェオレを淹れることもできますか。

「COBI COFFEEでアイスカフェオレを出していないので正式なメニューのように公表できませんが…もちろん応用可能ですよ。先ほどの氷70gのところを冷たい牛乳に置き換えて淹れてみましょうか。味は少し濃く出した方がはっきりとして美味しくなると思うので先ほどよりは少し豆を多く17〜18gくらい使って、同様に130ccのお湯でコーヒーを抽出し、牛乳と割ります。コーヒーと同量くらいの牛乳で割っても美味しいと思います。
どうしてもカフェオレはエスプレッソベースのカフェラテと比べて、輪郭の柔らかい飲み物になるので、ここに少しお砂糖で甘味をつけるとよりはっきりとした味わいになるんじゃないかなと思います」。

―最後に、アイスコーヒーの淹れ方として水出しコーヒーも少し一般的になってきたのかなと思いますが、水出しコーヒーってどうですか?

「ドリップを楽しもうという目的があるのでペーパードリップでのアイスコーヒーのレシピをご紹介しましたが、水出しコーヒー、実はおすすめです。前回話したように、コーヒーは湯温が何度であっても作れます。ということは、もちろん水でも淹れられるということですよね。その代わり、お湯に比べて抽出効率は格段に低いので時間はかかります」。

「これはハリオさんから出ている水出し用の器具ですが、50gのコーヒー豆に対して650ccの水を使用します。何度も出てきたブリューレシオの範囲内でこれも調整していて、この比率だと1:13ということになります。水を注いだら軽くかき混ぜて馴染ませ、8〜12時間冷蔵庫の中に入れおけば完成です。豆の挽き目は細引きでと書いてあったりしますが、粗くても全然大丈夫です。それは抽出効率の違いに表れるだけなので、粗挽きであれば浸ける時間を少し長めにとれば良いということになります。個人的には、粗挽きで長い時間浸ける方が綺麗な液体ができるかなと思っているので、COBI COFFEEで水出し用のコーヒーをご注文いただいても細く挽くことはあまりしていません」。

―8〜12時間というのはやはり測った方がいいですか。

「時間を測る必要はないと思います。水出しの場合はドリップと違って新しいお湯を注いで常に入れ変えていくということはなく、同じ水につけている状態になります。新しい水が入ってこないということはその決まった水の量に対して抽出されるコーヒーの成分は限度があるので、ある程度抽出されたタイミングで止まります。さらに、お湯だと抽出効率が高いことで、不必要な成分を取り出してしまう可能性もある反面、水は抽出効率が低いためにその心配が少なく、過抽出になる可能性が低くなります。その結果、雑味のない綺麗な液体を作ることができるのです。重要なのは冷蔵庫に入れること。常温だと水の温度が上がり抽出効率もそれに伴って上がってしまうので、それを防ぐために冷蔵庫には必ず入れてください」。

―器具がない場合は、例えばティーパックなどに入れたコーヒーを水にちゃぽんと入れるだけでも大丈夫ですか。

「いい質問ですね!それでももちろん大丈夫ですが、例えばそういった布やティーパックを用意する必要すらないですよ。水に直接、挽いたコーヒーを入れるだけでも大丈夫です。直接粉を入れた場合は最後にペーパーフィルターなどで濾してもらえたら、同じように出来上がります。ぜひ手軽に楽しんでください」。

PHOTO : Ryuhei Koumura(@ryuhei.koumura
TEXT : Yukina Moriya

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