表装 | スモトリ屋 浅野総本店

天然藍に魅せられて

天然藍に魅せられて

藍染

藍染と一口に言っても最近では、化学染料で染めたものも多く出回っています。藍の本場・徳島の、正真正銘の藍染の掛軸を作りたいという思いが、『天然藍灰汁醗酵建て』の本藍染にたどり着きました。古来より藍染は、防虫・防炎・防臭などの効果があるといわれ、掛け軸の修復などにも使われています。『本藍染』とは、昔ながらの藍甕(徳島県では大谷焼の専用甕を使用)で蒅(すくも)を醗酵させてつくった藍液で染めたものを言います。本藍染表装を仕立てるにあたり、江戸時代から伝統技法を守り続けを続けておられる染色家の方に依頼し、上質の絹織物を特別に染めていただきました。

江戸時代から伝わる「天然灰汁発酵建てによる本藍染」により日本古来の色を守り続けている。化学薬品を一切使わず、体に良い安全で害のないものづくりを心がけている。

本藍染の裂地

正絹を染める

絹糸を使用して雲のような模様に織り上げた緞子地を染めるには、匠の技が必要になる。甕の中まで手を入れ、まとわりつく生地を揺らしながら、全体に満遍なく染め上げる。植物性の木綿や麻と違い、絹の表面は動物性のタンパク質で覆われているので通常より染まりにくい。だが、良質な藍液で丁寧に染め上げることで絹独特の美しい光沢が出る。

藍返し

布を糸で縛って染める『しぼり』という藍染の技法がある。糸で固く縛られたところは、空気に触れず染料が入り込まないので白いまま。布いち面、総絞りを施してから、糸を外し、5回ほど染めあげると、今度は藍色の濃淡が模様のように浮かび上がる。このひと手間かけた技法を『藍返し』といい、白と紺のものより、味わいのある落ち着いた仕上がりとなる。

本物の藍色

勝色

濃厚な藍色は赤みを帯び、『勝色(かちいろ)』(従来は褐色と書く)と呼ばれた。戦国時代には多くの歩兵たちが鎧の下に藍染の下着を身に着けていたという。藍には抗菌や止血効果もあるといわれ、戦場でのトラブルを回避できる縁起モノとして重宝された。有機物である蒅には、藍の青だけでなく、黄色や茶褐色など他の色も混在している。10回程、染め付けをしてから地下水で水洗いをして不純物を落とす。そのあと中干し、もう一度、藍液で染める。そうすることで、堅牢度の強い濃厚な藍色、『勝色』となる。

天然藍灰汁醗酵建てへのこだわり

大谷焼の藍甕

徳島県鳴門市にある大谷焼きの藍専用の甕。地中に約1メートルほど埋め込んで使う。最近では、化学染料を用い、藍甕を使用せずにステンレスの水槽やポリバケツなど使用する場合があり、本藍染とは仕上がり具合が違ってくるが、天然藍醗酵建てには、この甕以外には考えられない。

藍の華

甕の底に沈澱する蒅を竹の棒で一日一回攪拌させる。攪拌すると、甕の中央に藍の華と呼ばれる泡の塊ができる。藍液は一日置きに休ませながら使うが次第に色を失う。藍の華は小さくなり、3~4か月で染料としての寿命を終える。寿命を終えた藍液はポンプでくみ出し、畑などに撒かれ、有機肥料となる。

吉野川の伏流水

水洗いは、三段階に分けてすすいでから、ひと晩水の中に浸けておく。上水道ではなく、敷地内にある井戸から汲み上げた地下水を使用するのは、乾いたときに藍独特の香ばしい匂いが塩素で消されてしまわないようにするためだ。工場北側を流れる吉野川の豊かな水の恩恵を受けている。